アルミニウムの加工技術
アルミニウムの板や押出形材などは、さまざまな加工を施すことによって、最終製品になります。
アルミニウムの加工技術には成形(曲げ・絞りなど)・切削・切断・接合・表面処理などがあります。これらの加工技術は近年めざましい進歩を遂げており、アルミ製品の信頼性を高め、新しい付加価値を生み出す重要な役割を担っています。
接合
接合は、信頼性のある複雑な形状の構造物などいろいろな製品を作る場合に欠くことのできない重要な技術です。
アルミニウムの接合法は、大別して「溶接」「機械的接合」「接合」の3つに分類することができます。
溶接法
アルミニウムの接合方法の主流を占めるのが溶接法です。一般に鋼など他の金属材料に用いられている溶接法が、アルミニウムにも適用されますが、なかでも広く使用されるのはイナートガスアーク溶接です。
イナートガスアーク溶接法は、接合される材料(母材)と電極との間にアークを発生させ、電極の周囲からイナートガス(アルゴンやヘリウムなどの不活性ガス)を流し、溶融部を大気から保護して行う溶接法です。これにはティグ(TIG)溶接と、ミグ(MIG)溶接の2種類があります。
ティグ溶接は、細いタングステン棒を電極とし、母材との間にアークを発生させ、そのアークにより母材と溶接棒(溶加材)を溶かしながら継手を形成する溶接法です。ミグ溶接は、アルミニウムの細いワイヤーを電極とし、母材との間にアークを発生させ、そのアークにより電極ワイヤー(溶加材)と母材を溶かして継手を形成する溶接法です。
レーザー溶接は、発信器から出たレーザー光を集束光学系にて高エネルギー密度(10W/c以上)の微小スポット熱源として、被加工物に照射する方法です。レーザー光が照射された被加工部は溶解されて、溶接部を形成することとなります。近年のレーザー溶接には、YAGレーザー溶接が多く用いられます。レーザー光の伝送にファイバを用いるため、自動機との組み合わせが容易となり、3次元の溶接が可能となります。
光ファイバを利用したYAGレーザ溶接装置の基本的構成
摩擦攪拌溶接は英国溶接研究所(TWI)で開発された新しい方法です。この溶接方法は図に模式的に示すように、高速で回転するツール(Stir rod)を被溶接材中に挿入して、移動させることによって接合する方法です。回転ツールと被溶接材との間で発生する摩擦熱を利用して接合する方法であり、摩擦熱により可塑化された材料が、ツールの回転によって混合され、ツールの移動によって後方に押し込まれることによって接合されます。従来の融解溶接では接合が困難であった複合材おびAl-Li合金が溶接可能であり、すべてのアルミニウム合金に適用可能です。
このほか電気抵抗溶接(スポット溶接など)は、航空機をはじめ、車両・自動車・家庭用品にも用います。
ろう付け・ハンダ付け
結合しようとする母材よりも融点の低い合金(ろう、はんだ)を、接合部に溶かし込んで接合する方法で、JlSでは、融点が約450℃以上の場合をろう付け(ブレージング)、450℃以下の場合をはんだ付け(ソルダリング)と区別されています。
はんだ付けは、亜鉛、鉛、すず、カドミウムなどの低融点金属の合金をはんだとして、アルミニウムの酸化皮膜をとり除くフラックスを併用しながら接合します。ただし、母材あるいは溶融はんだに超音波振動を加える場合にはフラックスを使用しないで接合することができます。
ろう付けは、比較的多量のけい素を含む融点の低いアルミ合金をろう材に用いる方法で、近年熱交換器などの製造に多用されています。
ろう付けには、あらかじめアルミニウムおよびその合金を心材として、その両面または片面にろう材をクラッドしたブレージングシートがよく用いられます。
ろう付けでは、母材表面の強固な酸化皮膜を除去し、溶融ろうの酸化を防ぐために従来は塩化物(NaCl−KCl−LiCl系)を含む侵食性の強いフラックスが使用されていました。しかし最近では新しいろう材やフラックスの開発により、フラックスを用いない真空ろう付けやちっ素ガス雰囲気ろう付け、侵食性のないフラックスを用いたろう付けなどが実用化されています。
機械的接合法
リベットやボルトなどの締結材を用いて接合する方法や、板の端を折り曲げてかみ合わせる方法などがあります。なかでもリベット接合は、航空機やバン型トラックの組立などに用いられる代表的な機械的接合です。
接着法
接着剤を接合面に塗布して接合する方法です。最近では接着剤の性能が向上し、信頼性のある継手が得られるようになっています。また、接着と抵抗スポット溶接を併用したウェルドボンド法が航空機や自動車産業で実用化されつつあります。